2014 Xenoblade Interviews, with Yasunori Mitsuda
General Information[edit]
https://www.nintendo.co.jp/wii/interview/sx4j/vol1/index.html
Chrono Cross[edit]
Japanese[edit]
1. 6人の音楽家を集めて
岩田
今日は東京・中目黒駅前にある モノリスソフト(※1)さんからお届けしています。 実は中目黒は、わたしが大学4年のときから 社会人になって最初の4年間の合計5年ほど、 家を借りて住んでいた土地なんです。
一同
へえ~っ。
岩田
当時はこのような高層ビルは建っていませんでしたので 駅の周辺がすっかり様変わりしていて驚いているんですけど、 今日はその懐かしい中目黒に来られるということも とても楽しみにしていました。 みなさん、よろしくお願いいたします。
一同
よろしくお願いいたします。
※1
モノリスソフト=1999年に設立されたゲームソフト制作会社。『ゼノサーガ』シリーズのほか、『ディザスター デイ オブ クライシス』(Wii)や『ソーマブリンガー』(DS)なども開発。
岩田
さて、これまで高橋さんは たくさんのソフトをつくってこられましたが、 今回は総監督という役割でしたよね。
高橋
ええ。企画の立案から、シナリオの執筆、 それにデバッグに至るまで、 ゲーム全般に関わることは何でもやりました。
岩田
今回は「音楽陣と語る『ゼノブレイド』」ということで、 まずはじめに、ここにいらっしゃる音楽家さんたちと 高橋さんの関わりの話からしていただけますか?
高橋
はい。今回のサウンドは計6人のチームで進めました。 で、僕の隣に座っている下村さんと光田さんとは・・・。
岩田
長年のおつきあいなんですよね。
高橋
はい。とくにみっちゃんとは15年くらいのつきあいになります。
岩田
みっちゃんですか(笑)。 光田さんのことをみっちゃんと呼んでいるんですね。 光田さんは高橋さんのことを何と呼んでいるんですか?
光田
高(たか)さんです。
岩田
みっちゃんと高さん。なるほど(笑)。
高橋
はい(笑)。 今回はタイトルに『ゼノ』(※2)という記号を入れたこともあって、 みっちゃんには、エピローグの唄モノの曲を担当してもらいました。
※2
『ゼノ』=高橋哲哉氏が手がけてきたRPGシリーズ。『ゼノギアス』(1998年)や『ゼノサーガ』三部作(2002年~2006年)などが発売されている。なお、光田康典氏は『ゼノギアス』のほか、『ゼノサーガ エピソードI 力への意志』(2002年)の楽曲を担当。
岩田
やっぱり『ゼノ』という名前をつけるからには、 光田さんの曲で締めたいという気持ちがあったんですね。
高橋
そうです。最後の大事な曲を頼むのはみっちゃんしかいないと。 これまでもみっちゃんとは仕事をする機会が多くて、 毎回のように「音楽に救われた」と感じていたんです。 そこで、今回も大事な部分をお願いすることにしました。
岩田
「音楽に救われた」という言葉を聞いて、 光田さん、どう思いますか?
光田
・・・やっぱりうれしいですよね、単純に。 そもそもゲームは 目と耳とコントローラの感触で楽しむものですけど、 ひとつの要素である楽曲で感動を増強したり、 映像やお話をフォローすることの重要性を いつも意識しながら取り組んできましたので。
高橋
それから下村さんですが、 彼女と直接仕事をするのは、実は今回が初めてなんです。
岩田
でも、もともと面識はあったんですよね?
高橋
はい。スクウェア(現・スクウェア・エニックス)時代に いっしょに働いていましたので、お互いの顔はよく知ってはいたんです。
岩田
でも、仕事をいっしょにするのは初めてなんですね。
下村
ええ、そうなんです。
高橋
僕としては、今回の『ゼノブレイド』では、 これまでのRPGの概念にしばられずに 新しいチャレンジをいろいろしたいと思ったんです。 それはサウンドに関しても同じで、 これまで僕が手がけてきたものとは違った雰囲気にしたいと考えて、 下村さんにメインテーマやオープニング曲などをお願いしました。
岩田
下村さん、高橋さんと初めて仕事をいっしょにして、 どんな感想を持ちましたか?
下村
わたしがもともと高橋さんに持っていたイメージは すっごく気むずかしい人で、 すっごく難しいオーダーをされるんじゃないかと、 ちょっとビクビクしてたんです。 ところが、実際にいっしょに仕事をするとそうでもなかったんですね。 それにゲームに対するビジョンをしっかりお持ちで、 たとえばわたしが、 「本当はもうちょっとここはこうしたいんだけど、 時間がないから、とりあえず出して、あとで直そう」みたいに ちょっとずるく考えちゃうことがあったんですけど、 そこをやっぱりズバッと指摘されちゃうんです。
岩田
任天堂のなかでも、同じような話を聞いたことがありますけど、 自信がないところをストレートに指摘されるというのは 指摘された瞬間はツライ思いをするんですけど、 一方で「わかってくれている」ということも感じるんですよね。
下村
そうなんです。なんか見透かされてるというか、 「よく見てるなぁ・・・」という感じがしました。 そういう意味ではすごく信頼できましたので、 今回は楽しみながら仕事をさせていただきました。
高橋
それから、清田さんと 3人組ユニットのACE+(エースプラス)さんとも初めての仕事になります。 今回の音楽関係はドッグイヤー・レコーズさん(※3)にお願いしていまして、 「とてもいいユニットがいるのでいかがでしょう」ということになり、 清田さんにはイベントやフィールドの曲をお願いしまして、 ACE+さんにも、イベントやフィールドの曲のほか、 バトル曲などを担当していただきました。
※3
ドッグイヤー・レコーズ=『ファイナルファンタジー』シリーズなど、ゲーム音楽の作曲で知られる植松伸夫氏が、2006年に設立した音楽制作会社。
清田・ACE+
よろしくお願いいたします。
岩田
よろしくお願いいたします。 では、『ゼノブレイド』の話に入る前に、 みなさんがどうしてゲーム音楽に関わることになったのか、 そういう話からしていただきましょうか。 まず最初は下村さんから。
下村
はい。ちょっと苦い思い出話になるのですが、 わたしは、学生時代はピアノの勉強をしていまして、 そのときに『スーパーマリオブラザーズ』(※4)にハマってしまい、 徹夜でやりすぎてしまったんです。 そこで、肝心のピアノのレッスンのときに、 先生から「あなたはどうして手が動かないの?」と言われてしまいまして。
一同
(笑)
下村
なので正直に、 「すみません、実は昨晩ずっとゲームをやっていまして」と言いましたら、 先生に「あなたね、そんなにゲームが好きだったら、 あなたはそっちのほうに行きなさい」と言われたんです。 でも、そのときはゲーム業界のことはまったく頭になかったんです。 ところが学校を卒業して、 気がついたときにはなぜかゲーム業界に入っていました(笑)。
岩田
それほどゲームがお好きだったんですね(笑)。 それで、下村さんは 『ストリートファイターII』(※5)の作曲を担当され、 それ以降もたくさんのゲーム音楽をつくってこられて、 任天堂タイトルで言うと『スマブラX』(※6)のアレンジや 『マリオ&ルイージRPG』(※7)などにも関わられているんですよね。
下村
はい。それは本当にラッキーだったと思います。 もともと作曲をしたことがほとんどないような状態で この世界に入りましたし、 本当は3年くらいで辞めちゃうんじゃないかと思っていたんですけど、 たくさんの方に支えられて、長々と仕事をさせていただいています。
※4
『スーパーマリオブラザーズ』=1985年9月に、ファミコンで発売されたアクションゲーム。
※5
『ストリートファイターII』=カプコンが制作した対戦型格闘ゲーム。1991年にアーケードゲームとして登場し、1992年6月にはスーパーファミコン版も発売された。
※6
『スマブラX』=『大乱闘スマッシュブラザーズX』。2008年1月に、Wii用ソフトとして発売された、対戦アクションゲーム。シリーズ3作目。
※7
『マリオ&ルイージRPG』=2003年11月に、ゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売された、アクションRPG。
岩田
次は光田さん、お願いします。
光田
学生時代の話なんですが、 僕は演劇の音効さんをずっとやっていたんです。
岩田
光田さんのルーツは演劇の音響効果の仕事なんですか。
光田
そうなんです。もともと役者さんの知り合いが多くて、 演劇の曲をつくったり、効果音を入れたりと、 そういうアルバイトを学生時代にやっていたんです。 で、たまたま僕の師匠にあたる方が、 エニックスさん(現・スクウェア・エニックス)の仕事に関わりまして、 僕は音効のお手伝いをしていたんですが、 「就職どうするの?」と聞かれまして、 「まったく考えていないんです」というような話をして。 それでたまたま目の前にあったゲーム雑誌をパッとめくると、 そこにスクウェアさんの人材募集の広告が載っていたんです。 で、師匠さんが「ここに応募したら?」と言うので、 実際に応募してみたら受かったんです。
岩田
スクウェアさんに入ったのはたまたまなんですね。
光田
たまたまなんです。もともとゲームは好きでしたけど。
岩田
ご縁って不思議ですよね。 演劇の音効さん時代から コンピュータを使って音づくりをしていたんですか?
光田
はい。コンピュータもけっこう好きでしたので、 それで音をつくっていました。 ところが音効の仕事をずっとやってきたので、 スクウェアさんに入って最初の頃は 作曲をほとんど担当させてもらえなかったんですね。 でもやっぱり自分でもやりたいと思って、 坂口(博信)さん(※8)に掛け合いまして、 初めて担当させてもらえたのが『クロノ・トリガー』(※9)だったんです。
高橋
『クロノ・トリガー』をつくったとき、 僕はグラフィックのディレクターを担当していました。
岩田
みっちゃんと高さんの関係はそのときから?
光田
そうですね。 そう考えると高さんとのつきあいは本当に長いですね。 僕は『クロノ・トリガー』以降、 ずっと曲を書く仕事をさせてもらっていますし、 ゲームの仕事も変わらずさせていただいているので、 本当に運がいいなと思います。みなさんに感謝ですね。
※8
坂口博信さん=『ファイナルファンタジー』の生みの親。ミストウォーカー代表。現在は2010年発売予定のRPG『ラストストーリー』(Wii)を制作中。
※9
『クロノ・トリガー』=1995年3月に、スーパーファミコン用ソフトとして発売されたRPG。発売元はスクウェア(現・スクウェア・エニックス)で、2008年11月にはDSにも移植された。
2. 個性を活かして、ひとつの方向に
岩田
清田さんは今回、事務所の方のご紹介でご縁ができたんですね。
清田
はい。わたしはこれまで たとえば『ポケパークWii』(※10)の曲を担当したりとか、 『ヘラクレスの栄光』(※11)でオープニングの歌をうたったりしてきました。
岩田
清田さんは曲も書くし、歌もうたわれるんですね。
※10
『ポケパークWii』=『ポケパークWii ~ピカチュウの大冒険~』。2009年12月にWii用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャーゲーム。発売元は株式会社ポケモン。
※11
『ヘラクレスの栄光』=『ヘラクレスの栄光~魂の証明~』。2008年5月にDS用ソフトとして発売されたRPG。
清田
はい。それで今回、ドッグイヤー・レコーズさんから 「作曲を担当してみない?」と言われたので、 その場で「やりまーす!」と手を挙げて このプロジェクトに飛び込みました。
岩田
ずいぶんうれしそうにお話されますね(笑)。
清田
はい、それはもう(笑)。 というのも、わたしは子どもの頃からゲームが大好きで、 中学生のときは下村さんや光田さんのゲームで遊んでいたんです。 ですから、今回はいっしょに仕事をさせていただくことができて、 すっごくうれしいんです。
岩田
じゃあ、今日は同じ席に座ることができて・・・。
清田
ウハウハしています(笑)。
岩田
(笑)。のちほど、どのように曲づくりをされたのか じっくりお訊きすることにして、 最後はACE+さんですが、まずはCHiCO(チコ)さんから 3人組ユニットの紹介をしていただけますか。
CHiCO
はい。わたしは、隣に座っている、ともりくんと2人で ACEというユニットをやっておりまして、 そのユニットに平松くんを加えまして・・・。
岩田
それでACE+(プラス)なんですね。
CHiCO
そうなんです。今回は3人チームとして制作しました。 わたしはもとは演劇出身なのですが、 俳優のほかにお芝居のときに流れる曲の選曲もやっていたんです。 既成の曲を選んで曲を流すよりも、 自分でつくったほうが脚本やセリフに合うし、 そうしたほうが早いので、作曲をはじめるようになりました。 すると、しだいに演劇から音楽の世界にシフトするようになり、 音楽事務所に入ったんですが、そこの社長から 「ゲームの曲をつくってみないか?」と言われて、 初めてゲーム作曲に関わったのが『みんなでたまごっち』(※12)でした。 作曲のほかに、最近では光田さんプロデュースの 『ルミナスアーク3アイズ』(※13)でも主題歌をうたわせていただいたりして、 ゲーム音楽に関わっています。
岩田
『みんなでたまごっち』はNINTENDO64でも発売されましたので もうずいぶん前になりますよね。
CHiCO
そうですね、かれこれ13年くらい前になります。 で、それからゲームの曲づくりをしている感じです。
※12
『みんなでたまごっち』=『64で発見!! たまごっち みんなでたまごっちワールド』。1997年12月に、NINTENDO64用ソフトとして発売されたパーティゲーム。発売元はバンダイ。
※13
『ルミナスアーク3アイズ』=2009年12月にニンテンドーDS用ソフトとして発売された、シミュレーションRPG。発売元はマーベラスエンターテイメント。
岩田
ともりさんは?
ともり
内容はCHiCOが言ったこととほとんど同じなんですけど、 僕はもともとギタリストをやっておりまして、 彼女が言ったように、『みんなでたまごっち』で曲づくりに関わって、 それ以来、この世界にのめり込んでいます。
岩田
それからずっとゲーム音楽に関わられているんですか?
ともり
いえ、いろんな活動をしたいと思っていまして。 あるときは演奏して、 またあるときは作曲ということを繰り返しながら、 いまはユニバーサルミュージックで CHiCOとのACEの活動を拠点にしながら、 ゲームのほかにも、アーティストへの楽曲提供や CMや映画の曲づくりなどに関わっています。
岩田
幅広い分野で活動されているんですね。 それでは最後に平松さん。
平松
僕も、子どもの頃からゲームが大好きで、 小学生のときに家にあったパソコンを使って 雑誌に載っている譜面を打ち込んだり、 自分で曲をつくったりして遊んでいました。 高校でバンドを組んだあたりからは音楽漬けになって、 そのまま、いまの道に進みました。 現在はCMや映画の作編曲のほか、 アーティストさんのサポートキーボードや サウンドプログラミングの仕事をさせていただいています。 今回、このプロジェクトに加わらせていただいて 自分がかつて夢中になって遊んだゲームを思い出しながら、 いまの自分ならどんなふうに音にできるだろうと、 楽しみながら作曲をさせていただきました。
CHiCO
あの・・・実は平松くん、すごい任天堂ファンなんです。
岩田
ありがとうございます(笑)。
CHiCO
しかも超がつくくらいのゲーマーなんです。 で、いろいろ曲づくりをするときに、音楽の観点だけでなくて、 ゲームの細かい話を、 「これはね・・・こういうことなんだよ・・・。」 とか言ってくれたりして(笑)。
岩田
うんちくを出す係だったんですね。
CHiCO
はい(笑)。 ですから、わたしたちACEにとっても 文字通り、強力なプラスになりました。
岩田
ちなみに高橋さん、『ゼノブレイド』には いったい何曲くらい入っているんですか?
高橋
90曲くらいですね。
岩田
90曲とサラッと言いましたけど、ものすごい数ですね。 1曲つくるだけでも大変なのに。
高橋
そうです。 なので、6人の音楽家さんが必要になったんです。
岩田
なるほど。いまみなさんからお話しいただいたように、 長年ゲーム音楽だけに関わってきた方もおられれば ゲーム以外の音楽表現もされているという方もいて、 その意味では、幅があるかと思うのですが、 高橋さんは今回、どんなふうに曲づくりのリクエストを出されたんですか?
高橋
たとえば光田くんの場合は、 どんな曲が求められているか、彼はわかってくれていると思いますし、 逆に、僕がこう言えば、どんな曲が返ってくるのかもわかっているので、 わりと雰囲気だけを伝えて、あとはお任せするケースが多いんです。
岩田
つきあいが長いのでお任せできるんですね。
高橋
はい。でも今回は6人の作曲家さんそれぞれに 得意な分野やカラーがありますので、 そういった個性を活かしつつも、 バラバラの曲調にしてはダメだと思っていました。
岩田
今回、わたしが最初に訊いてみたいと思ったのはそこなんです。 これまでいっしょに仕事をしたことのない人たちが集まり、 それぞれの個性を失くさないようにして、 その一方で、統一感のある音楽にまとめるというのは 言葉で言うほど簡単にできることではありませんよね。
高橋
ええ。そこでまず、僕自身の頭のなかで、 各シーンの雰囲気に合う、曲のイメージを構築することからはじめました。 それで、みなさんにはちょっと失礼かなと思いつつも、 「このシーンだったら、こういう感じの曲をお願いしたい」 ということで、いろんな曲のサンプルをお渡ししたんです。
岩田
高橋さんがどんな感じの曲を求めているのか、 既存の曲をサンプルとしてお伝えしたんですね。
高橋
はい。でも、最初の段階では 申し訳ないと思いつつ、かなりダメ出しをしました。
岩田
それはどうしてなんですか?
高橋
サンプルの曲に引っ張られすぎてしまって、 それぞれの持ち味が表現できていなかったんです。 そこで、「こうじゃないよ」ということを繰り返しながら、 1本の作品として、ひとつの方向に持っていきつつ、 でも個性は出してもらう、といったことを とても密にやりとりさせていただきました。
岩田
その判断はすべて高橋さんがされていたんですか?
高橋
そうです。
岩田
光田さんは高橋さんとは何度もされているから、 勝手がわかっていると思うんですけど。
光田
そうですね。
岩田
でも、清田さんたちは、 「こんな感じで」と言われて、それでつくった曲を恐る恐る出すと、 「こうじゃない」とか言われるわけですよね。
清田
はい。
岩田
そのときどう思いました? 恐くはなかったですか?
清田
すっごく恐かったです(笑)。 曲をアップしてから、その返事がメールで届くんですけど、 まるで受験して合格発表を待つみたいな気持ちでした。 たまに、ほめてくださるときもあって、 そのときは「うわわわぁ~」と喜び・・・。
岩田
ほめてもらうと天に昇り?
清田
でも、ダメなことのほうが多かったんです・・・。
岩田
ダメと言われてスランプに陥ったりしませんでしたか?
清田
そこはもう、とにかく締切を守ることに必死でしたから、 家のなかを歩き回って自己暗示をかけていました。 「いまからわたしは、素晴らしい曲が書けるようにな~る!」と。
岩田
あははは(笑)。
清田
でも、ダメ出しをされたときも、 どのような曲に書き直したらいいのかを わかりやすく、的確に指示をしてくださったので、 すごく勉強になりました。
岩田
自分が活かされていると感じました?
清田
自分が活かされているというよりも、 「あ、わたし、こんな曲もつくれたんだ」 という発見がありました。
岩田
ああ、自分では自覚していなかったいいところを 高橋さんから引き出してもらったんですね。
清田
はい、本当にそんな感じでした。そもそもわたしは 「不安」をテーマに曲をつくったことがなかったんですけど、 高橋さんからいろいろと引き出してもらううちに いろんな「不安」の曲が書けるようになったんです。 「不安1」「不安2」「不安3」という感じで・・・。
岩田
「不安」だけで何種類も曲づくりをしたんですか(笑)。
高橋
「不安」と言ってもいろいろありますよね。 「大きい不安」「小さい不安」「男の人の不安」とか。 それを贅沢にオーダーしていくと、どんどん増えていきますから。
清田
ほかにも「恐怖」とか「恐れ」の曲などもつくったのですが、 どうしてもそういう方面の曲をつくっていると その世界に入り込んでしまうんですね。 ですから「不安」の曲をつくっているときは、 精神状態がどんどんダメになっていくみたいなところがあって、 「これでダメ出しされたら、わたしはもうダメ」と。
一同
(笑)
清田
ですから、とにかく一生懸命に自分を絞りに絞って曲づくりをしました。 だからいまのわたしは、絞りかすなんです(笑)。
一同
(笑)
3. ファーストメールをめぐって
岩田
清田さんを絞りかすにしてしまうほど、 高橋さんからのメールは、作曲家さんの個性を引き出す とても巧みで的確なものだったということなんでしょうか。
高橋
実は、うちのスタッフを間に入れていたんです。
一同
えっ?
岩田
高橋さんがダイレクトにメールを送ったんじゃないんですか?
高橋
そうなんです。 というのも、僕が書いている内容をそのまま渡すと、 たぶん立ち直れないだろうなと。
岩田
(笑)
高橋
僕はこだわっていることに対しては、 けっこう言葉がキツくなる傾向にあるんです。 そこで、僕がリテイクを出した内容を けっこうマイルドに書き直してもらったうえで、 それを音楽家さんたちにお送りするようにしていました。
清田・CHiCO
そうだったんですね・・・。
岩田
いま初めて知ったんですか?
一同
はい。
高橋
・・・あのファーストメールは見せられないです。
岩田
そんなにキツイ表現なんですか。
高橋
・・・はい。
CHiCO
あちゃー(笑)。
一同
(笑)
ともり
でも僕は、ほかの人が書いていると聞いて、やっとわかりました。 というのも、ひとりの意見じゃないような印象があったんです。
CHiCO
しかも、歯の間に何かが挟まったような感じで(笑)。
ともり
だから、ビックリマークひとつとっても、 「このビックリマークはどんな意味なのかな?」とか。
CHiCO
そうそう!「・・・」の数も、こっちは4個だけど こっちは3個しかないのは、深い意味があるんじゃない? とか言ったりして。
一同
(笑)
ともり
今日、この場で謎が解明されました。
岩田
やっぱりモノをまとめるときには、 いろんなことに対してすごく厳しくする必要があるんですよね。 もし判断の軸を甘くしてしまうと、 モノは簡単に悪い方向にどんどん崩れていくものですから。 ですから、ここも、あそこも、いろんなところに完璧を求めていき、 完璧じゃないものに対して、それをすごく強く否定しないと、 なかなか理想の姿には収束しないんですよね。
高橋
そうですね。
岩田
ただ、感じたことをそのまま伝えてしまうと、 人によっては立ち直れなくなったりするので、 間に人を入れて、オブラートに包む必要があったということなんですけど、 そうやって、マイルドにする役の人が間に入っても 清田さんの心にはけっこうグサグサと刺さっていたんですよね。
清田
(コックリうなずく)
一同
(笑)
岩田
そういったメールのやりとりは 開発の最後の最後まで続いたんですか?
高橋
開発の中盤過ぎたあたりから わたしがキツイ表現で書くことも少なくなってきました。 おそらくみなさんが、お互いの曲調とか雰囲気を読んでくれて、 各自がそれに合わせてくれていたんじゃないかと思います。
岩田
CHiCOさん、実際はどうだったんですか?
CHiCO
そうですね。開発の中盤を過ぎてからは、 なんとか曲づくりの方向性が見えてきたんですけど、 最初の頃はやっぱり大変でした。 清田さんとお互い、日々泣きそうになる感じで。
清田
最初の頃は、励ましてもらったり、 わたしが励ましたりと、お互い励まし合っていたんです(笑)。
CHiCO
もともと音が異なるチームでしたので、 高橋さんは「バラバラの世界になっちゃいけない」 「統一感が大事だ」ということを繰り返しおっしゃっていて、 それはやっぱり曲調がバラバラだったからなんですね。 どうしてもはじめの頃は、清田さん節、ACE+節みたいに なってしまったんですけど、 なんとか時間をかけてすりあわせていきました。
岩田
どうやってすりあわせをしたんですか?
清田
実はACEさんたちが家に来てくれたんです。
CHiCO
清田さんも家に来てくれました。
岩田
ああ、お互いの家を行き来したんですか。
清田
そうなんです、お互いに行き来して、 まず、音づくりの環境から見直すことにしました。 わたしがそれまで使っていた機材を見ていただいて、 「ここから出る音はどんなんだろう」と、 そんな細かなことまでチェックして。
CHiCO
やっぱり曲調をそろえるには、 同じ環境にしたほうがいいということになったんです。
清田
そこでソフトも買い換えることにして、 それまで馴染みにしていたソフトともお別れしました(笑)。
岩田
そうやって、だんだん同じチームになっていったんですね。
清田
はい。
CHiCO
最後のほうは、団結しまして。
清田
すごく仲良くなりました。
岩田
団結して、仲良くなって、 さっき高橋さんが言ったように、 開発の中盤から曲調が合ってくるようになったんですね。 でも、清田さんとACE+さんを そこまで駆り立てたものは何だったんですか?
CHiCO
先ほど、清田さんが 「下村さんや光田さんと仕事ができてうれしい」という話をしましたけど、 それはわたしたちも同じなんです。 とくに尊敬している光田さんが高橋さんと ずっと仕事をやってこられていたので、 その意味でも、高橋さんについていけば間違いないと思ったんです。
岩田
光田さん、そういうふうに見られていたのは知っていました?
光田
・・・いえ、ぜんぜん知らなかったです。
岩田
衝撃の告白ですね(笑)。
光田
衝撃です(笑)。
CHiCO
ということがあって、最後まで信じていけばいいと思っていました。 で、高橋さんはご自身で、音楽をいろんなシーンに 差し込むような編集をされているんですけど、 その当て方がめちゃくちゃお上手なんです。 わたしも演劇がきっかけで音楽の道を選んだので、 どのシーンにどう音を使うかにはこだわりが強いんですけど 最初に当て込んでつくった曲と、 違うところに曲を差し込んでいらっしゃることもたくさんあって、 「え、この曲はここ?」みたいな入れ方もあって・・・それが大変素敵で。 だからやっぱり高橋さんについていってよかったと思っています。
岩田
高橋さん、CHiCOさんはそう言ってますが。
高橋
・・・この場から逃げたいです。
一同
(笑)
高橋
でも、最初に「音楽に救われた」という話をしましたけど、 ゲームというのは手で触って、目で入ってきて、だけではなくて、 音からくる感覚がすごく大事だと思っているんです。
岩田
その「音楽に救われた」という想いは 今回の『ゼノブレイド』でも同じなんですね?
高橋
はい。今回はとくにそうです。 だから1音も無駄にしたくないという想いが強くありました。 もちろんこちらから「こういう曲をつくってください」 とは伝えているんですけど、 僕のキツイ意見に対して返ってきた曲を聴いてみると、 そこには新しい発見があるんです。 そこで「この曲はこういうことを表現したいんだな。 であれば、別のこのシーンに当てたほうがいい」みたいなかたちで、 かなり慎重に編集しました。
4. 「いわゆるRPGの感じにはしない」曲づくり
岩田
そもそも今回の『ゼノブレイド』の音楽に関して、 高橋さんはどのようなコンセプトをお持ちだったんですか?
高橋
僕は、ジャンルや楽器をひとつに絞り込みたくはなかったんです。 もちろん、アコースティック系の楽器だけでまとめたりだとか、 方向性はいろいろあると思うんですけど、 それだとどうしても単調な印象になってしまうんですね。 だから今回はいろんな楽器を使いたいと思って、 ストリングスのなかに、エレキっぽい楽器が 入ってくるのもありだろうと。 もともと、ともりさんはギタリストですしね。
ともり
はい(笑)。
高橋
RPGなのでRPGらしい戦闘のシーンは必須ですけど、 逆にそういうのを少し崩すような雰囲気の曲調であったり、 楽器の使い方をしたいと考えていました。
岩田
それぞれの持ち味が違うことを活かして、 バラエティ感を出そうということなんですね。
高橋
はい。
CHiCO
高橋さんは最初の頃 「いわゆるRPGらしい感じにはしない」ということをおっしゃったんです。
岩田
なるほど。でもそれはチャレンジですね。
CHiCO
「だけど、ふつうに」ということもおっしゃって。
岩田
ええっ? ・・・でも、それを聞いて、固まりませんでした?
CHiCO
やっぱり「えっ?」という感じにはなりました(笑)。
高橋
そこはRPGのお約束のようなサウンドを 崩したかったということなんです。 ただ、ちょっと手前味噌になりますけど 結果としてよい感じに仕上がったんじゃないかなと思っています。 それぞれが担当した曲によって、個性は出ていると思うんですが、 トータルで聴いてみると、誰がどの曲を担当したのか わからないんじゃないのかなと思いますし。
岩田
ああ、馴染んだ感じがするんですね。
高橋
ええ、世界に馴染んだ感じがします。 しかも多様性をすごく出せたように思います。
下村
わたしも、清田さんとACE+さんが担当された曲を まとめて聴かせていただいたんですけど、 本当に素晴らしいなあと思いました。 その前のメールのやりとりをずっと見ていましたから、 すごく細かい部分のリテイクだったり、 追加のオーダーで苦労されていたのを知っていたので、 すごく感慨深いものがありましたし。
岩田
あの苦悩を乗り越えてこの曲があるんだと。
下村
そうなんです。 6人6様に、みんなのなかにそれぞれあった熱い想いが、 ひとつの作品として音楽がまとまったかたちで昇華されたと感じていますので、 全部の曲を楽しんでいただきたいと思います。
岩田
光田さんからは何かありますか?
光田
僕が担当した曲は、最後のエピローグで流れる曲なんですが、 みなさんがつくられた曲が壮大な物語を牽引して エピローグまで来るわけですが、 「最後にちゃんとつながるようにまとめなきゃいけない」 という想いがあって、曲を書くのにすごく悩みました。
岩田
みんなのエネルギーが大きいのがわかるから、ですよね。
光田
みなさんが頑張ったのはよくわかっていましたし、 だからこそすごいパワーを感じたんですね。 その努力を無駄にしてはいけないという想いで、 エピローグの曲を書かせていただきました。
岩田
しかも高橋さんからは 「最後の曲を頼むのはみっちゃんしかいない」 と言われてたわけですし(笑)。
光田
だから超プレッシャーのかかる仕事でした(笑)。 高さんと、ここにいるメンバーが手がけられた曲との 両方から僕は板挟みになっていましたので けっこうツライものがあったんですけど、 つくっていてすごく楽しかったです。 その結果、自分としては、壮大な物語を キレイに終わらせるという役目ができたと思っていますので、 じっくり聴いていただけたらうれしいですね。
岩田
清田さんからも、音楽に関わった立場から オススメするところはありますか?
清田
わたしが感じたのは、 ひとつの作品のなかで、こんなにバラエティ感があって、 世界観が異なる音楽が、こんなにまとまったものは、 たぶん世の中にないと思うんです。 ですから、音楽だけを聴いても いろんな世界が見えて楽しいんじゃないかと思います。
CHiCO
そうなんですよね。 これだけたくさんの人数が絡んでいて、とてもバラエティがあるのに、 とてもキレイにまとまっていると思うんです。 それは高橋さんの調整や編集の力あってのことだと思いますけど。
このゲームの最初は、 →下村さんの楽曲でゆったりとはじまって、 ピアノがとてもいい感じなんです。
で、ほかの曲では、清田さんはボーカリストでもいらっしゃるので、 すごくきれいな、天のような声で、ハーモニーが入っていたり、 わたしも歌い手ですのでコーラスを入れさせていただいたり、 あと平松くんもキーボードを弾くし、 ともりもギターを弾くしということで、 そんな生演奏も入っているのが 今回はお楽しみいただけると思います。 そして最後は、光田さんが素晴らしい歌もので締めてくださっているので、 わたしはたぶん・・・ゲームを買ってやったら、泣くと思います。
岩田
CHiCOさんが“泣ける保証”です(笑)。
一同
(笑)
岩田
ともりさんは?
ともり
僕が言いたいことはみなさんとほぼ同じで、 「いわゆるRPGの感じにはしない」という命題が与えられて 最初はすごく試行錯誤したんです。
岩田
お手本がないというのは大変ですよね。
ともり
そうなんです。 でも、最終的にすごくまとまったものになりましたし、 「ほかのRPGとはちょっと違うサウンドだけど、すごくいいな」と 感じていただけると、すごくうれしいですね。
岩田
ほかのRPGとの違いも楽しんでほしいということですね。 それでは最後に平松さん。
平松
曲をつくりはじめた頃に イメージをつかむためにその時点のゲームを触らせていただいたんです。 そのときは仮の音が入っている状態のものだったんですけど、 すごく奥行きがある映像だなあと思ったんですね。 で、「あの遠くに見えている崖まで、実際に歩いていけるんです」 という説明を受けまして、その世界の拡がりや 空気感をものすごく感じることができて、 僕はすごくドキドキしたんです。
岩田
どう聞いても、とても作曲家の方とは思えないコメントですね(笑)。
平松
すみません(笑)。 ですから、ソフトが完成して、自分でコントローラを握って、 あの広い世界をプレイヤーとしてドキドキしながら冒険するのを すごく楽しみにしています。
高橋
まさにゲーマーの発言ですね。ありがとうございました(笑)。
一同
(笑)
5. それぞれの『ゼノブレイド』
岩田
それでは最後に みなさんにとって『ゼノブレイド』はどんなゲームなのか、 ひとことずつお願いできますか? 順番を逆にして、ゲーマーの平松さんから訊くことにしましょうか。
平松
はい(笑)。僕にとっての『ゼノブレイド』は、 小さい頃にゲームで感じた冒険することのワクワク感が、 大人になったいまでも感じられるようなゲームだと思います。
ともり
僕は最初に触らせていただいたときに、 見ているだけでリラックスできるような景色があって、 すごく気持ちがよかったんです。 ですから、難しいことはあまり考えずに、 気楽にそういった部分を楽しんでいただけたらと思います。
CHiCO
わたしは単純にホンがすごく面白いと思いました。
岩田
演劇出身だから「ホン」なんですね(笑)。
CHiCO
あ、シナリオですね(笑)。 それを読んで、セリフのひとつとっても、 すごく熟考されているなあと感じたんです。 そこで、ひとりになったときは、声を出して読んでいたんです。
岩田
まるで役者さんですね。
CHiCO
はい。おかげでいろんな役をしゃべれるようになりました(笑)。
岩田
そこまでしたのは、 曲をつくるうえでも大事なことだったんでしょうね。
CHiCO
そうですね。 やっぱり、あの世界を自分のなかに入れて 曲づくりをしたほうがいいと思いましたし。 でも、セリフ自体が単純に面白いんです。 それに、声優さんの選択とかもすごく熟考されていて、 録音の現場もちょっと見せていただいたんですけど、 そこでも「こーじゃない、あーじゃない」というやりとりがたくさんあって、 こだわり抜かれてつくられた感じがあるので、 音楽もひっくるめて、すごく面白いゲームになったと思っています。
岩田
清田さんは?
清田
わたし、やっぱりゲームが好きだったので、 ゲームの世界のなかにすごく行きたかったんです。 で、『ゼノブレイド』をやらせていただいたときに、 「わたし、この世界を歩いている!」という感じがしたんです。 しかも、一方的に見せられるものではなく、 わたしが主人公と同じ気持ちになって見られるものだったので、 実際にこの世界に入れるような感じがしました。
それに、わたし30代なんですけど 同じ世代の人たちは子どもの頃から ゲームが好きで育っていると思いますし、 そういう人たちが「もう1回、RPGをやろうかな」と思ったときに、 絶対に面白いと保証できるゲームだと思います。
岩田
では光田さん。
光田
久しぶりに高橋監督の作品が世に出るということで、 たぶん長い間待っていらっしゃった方も多いと思うんです。
岩田
このように、エネルギーと時間を たっぷり注ぎ込めてつくるというのは、 そう簡単にできることではありませんからね。
光田
はい。ですからこれまでの『ゼノ』ファンの方だけでなく、 新しいRPGという意味でも いろんなゲームファンの方に喜んでいただけるんじゃないかと思います。
岩田
では、下村さん。
下村
今回の『ゼノブレイド』は、最初に見せてもらったときに すごく目に訴えるなあという印象があったんですね。 世界観もすごいアイデアで、すごく大きな神様が立っていて。 そのスケールの大きさに圧倒されたんです。 いったいどうやって、そういう物語を閃くんだろうと。 実はゲームには、まったく関係ないところで いろいろ想像が湧いたりもしていたんです。
岩田
それはたとえばどんなことですか?
下村
→人型の神様が舞台ですので、 引力はどうなっているんだろうとか、 この海の先はどうなっているだろうと考えちゃったりとか。
岩田
(笑)
下村
どうでもいいことなのかもしれないんですけど、 でもすごく刺激される世界観なんですよね。
岩田
考えずにいられなくなるんですね。
下村
そうなんです(笑)。 さらにシナリオを読ませていただいても、 心にすごく訴えてくるものがありましたので、 そこで感じたことや、大きなスケールに負けないよう、 「これは絶対に耳にも訴えかけなきゃ!」と すごく気合いが入りました。 なので、いろんなところで、それぞれの方に 響くようなゲームになったんじゃないかと思っています。
岩田
ありがとうございました。 それでは最後に高橋さん、お願いします。
高橋
今回、音楽に関しては、 自分にとってはひとつのゴールといいますか、 必ずここまで到達したいという想いを持っていて、 それを実現するために、申し訳ないと思いつつも、 「ここはもう1回つくり直してほしい」などと ときにはかなりキツイ言い方をしてきました。 でも、ここにいる6人のみなさんは、 そんなわたしの勝手な想いに応えてくれて、 めざすゴールに一丸となって走っていただいたと感じています。
先ほど、曲を編集した話をしましたが、 それをやること自体がすごく楽しかったんです。 この曲は回想シーンにしようとか、 こっちの曲はバトル、みたいに 1曲1曲を選んでつけるのが本当に楽しかったんです。
岩田
そのように高橋さんが楽しみながら曲の編集をしたことは、 実際に遊んでくださるお客さんたちにも自然と伝わるんでしょうね。
高橋
そうなるよう願っています。 今回、早期購入者特典として 「スペシャルサウンドトラックCD」がつきますし、 ゲームはもちろんですが、 音楽だけでもお楽しみいただければうれしいです。 選りすぐりの12曲を収録したCDになっていますし、 それぞれのみなさんがつくった曲が入っていますので。 早期購入者特典 スペシャルサウンドトラックCD
収録曲の一部がご視聴いただけます。 →下村陽子さん作曲 →清田愛未さん作曲 →ACE+さん作曲
光田
ちなみに、エピローグの「Beyond the Sky」の 作詞をしたのは高橋さんなんです。
岩田
ここにいる全員の、汗と涙と熱い想いが そのCDにたっぷり詰まっているということなんですね。 わたしもゲーム音楽の大事さについては これまでいろんな話を訊いてきましたけど、 今日、みなさんの話を訊いて、 もともと方向が同じじゃなかっただけに ひとつのチームとしてまとまっていく過程が すごく面白かったですし、とても豊かな感じがしました。
もちろん途中では、いろんなツライこともあったでしょうけど、 みなさんのお顔を拝見していると、 「大変だったけど、充実した仕事でした」 という感じがすごくします。 今日は本当にありがとうございました。
一同
こちらこそありがとうございました。
岩田
もう言い足りないことはありませんか?
ともり
あの・・・僕としては、高橋さんが書いたファーストメールを 機会があれば見せていたただきたいなと。
CHiCO
そんな恐いことを(笑)。
下村
わたしも。見てみたい・・・。
岩田
終わったいまだと、安心して見られますしね(笑)。 高橋さん、どうですか?
高橋
いや・・・すみません、できれば逃げたいです。
一同
(笑)
English (DeepL)[edit]
Iwata.
Next, Mr. Mitsuda, please.
Mitsuda.
This is a story from my school days, but I used to work as a sound designer for the theater.
Iwata
So your roots are in theatrical sound effects?
Mitsuda
That's right. I originally knew many actors, and I worked part-time as a student creating music and sound effects for plays. My mentor happened to be working for Enix (now Square Enix), and I was helping him with sound effects. I told him that I hadn't thought about it at all. I happened to flip through a video game magazine that was in front of me, and there was an advertisement for Square's job opening. My mentor said, "Why don't you apply here? So I actually applied, and I was accepted.
Iwata
So it was just a coincidence that you ended up at Square?
Mitsuda
It was by chance. I always liked games.
Iwata
It's a strange thing about fate, isn't it? Have you been using computers to create sounds since your days as a theatrical sound designer?
Mitsuda
Yes, I did. I liked computers quite a bit, so I used them to create sounds. However, since I had been working as a sound effects engineer for so long, I was hardly allowed to compose music when I first joined Square. But I still wanted to do it myself, so I approached Hironobu Sakaguchi (*8), and the first game I was allowed to work on was "Chrono Trigger" (*9).
Takahashi
I was in charge of graphic design when we created "Chrono Trigger".
Iwata
Did your relationship with Mitsuchan begin at that time?
Mitsuda
Yes, that's right. When I think about it, I have known you for a really long time. I have been writing music since "Chrono Trigger," and I am still able to work on games as well, so I really feel lucky. I am grateful to all of you.
8
Hironobu Sakaguchi = Creator of "Final Fantasy. Representative of Mistwalker. Currently working on the RPG "The Last Story" (Wii), scheduled for release in 2010.
9
Chrono Trigger" = RPG released in March 1995 for the Super Nintendo Entertainment System. It was released by Square (now Square Enix) and was ported to the DS in November 2008. It was also ported to the DS in November 2008. 2.
From: Interviews